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スチュワーデスという言葉

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最近、客室乗務員の呼び方で、スチュワーデスという言葉に代わり、キャビンアテンダント(CA)、フライトアテンダント(FA)がよく使われます。皆さん、それはなぜなのか、ご存知ですか?それには、歴史的背景があります。きっとこれまで誰も触れなかったこのトピックについて以下にお話したいと思います。

毛布を配るスチュワーデス

■スチュワーデスの本来の意味

そもそもスチュワーデス、は、スチュワードの女性版を指す言葉です。例えば、俳優を男優(actor) と女優(actress) で別の表現をしたり、男の校長をheadmaster、女の校長をheadmistress と区別して呼ぶのと同じです。
それではスチュワードとは、元来どういう意味なのでしょうか。

ちなみにスチュワードシップという言葉があります。これは

スチュワードとは英国生まれの言葉です。スチュワードは、英国のマナーハウス(manor house)に象徴されるような、館、領主の邸宅などに仕える、メイド、料理人、掃除係などの使用人を監督し、問題があればその解決にあたります。また、財産の管理も行う会計係も務め、領主に対しては秘書的な役割も果たす、実に重大な職務を指した言葉です。 執事というとバトラー(butler)という言葉もありますが、これはスチュワードより下位の職務です。貴族などの執事は男性でなくてはならず、これはチェンバレン(chamberlain)と呼ばれます。

古代の西ヨーロッパでは、家畜が大切な財産で、封建時代にはその管理が非常に重要な責務でした。この重要な役職に最初に与えられた古代の英語は「stigweard」。stigは「豚小屋」、weardは「番人」で、「豚小屋の番人」を意味していました。何度もいいますが、これは封建時代に諸侯の重要な役割でした。やがて時代が変わり、steward は管理人、世話係、執事などの役職を指すようになります。一部のメディアでは、それがスチュワーデスstewardess(末尾の-ess は女性を示す接尾語)の語源だと、侮辱する際に使われているようです。封建時代に重要な役職名として与えられた言葉だということを知らずに。。。

つまりStewardessは、飛行機でお客様の安全を守る保安要員であり、病人が出れば、救命あるいは看護士の役目も果たし、かつ快適な空の旅ができるよう気持ちの良いサービスを提供する達人でなくてはなりません。機内でそうした複数の重要な責務を担う女性の職業として、この名称が与えられたのだと思います。

■その本来の意味を変えた出来事

コーヒー

スチュワーデスは米国で、1960年代までは、女性の誰もが夢見る職業で、stewardessと呼ばれていました。しかし、元スチュワーデスだった2人の米国人女性が自分達の体験談を基に「Coffee, Tea or Me?」(コーヒー、紅茶、それとも私?)という本を1968年に出版します。スキャンダラスな内容が大きな話題となりました。航空会社はこの本の話題性を逆手にとり、自分達の業績アップのための広告の概念に利用します。つまりテレビのコマーシャルなど、広告媒体にスチュワーデスを使用し意味深なセリフを言わせたりしました。この戦略が奏功し航空会社は顧客獲得で大成功を収めましたが、全米の女性団体などから猛烈な非難を受けます。さらにこれが大きな論争に発展します。スチュワーデスという表現が好まれなくなったのはこうした理由があります。

この流れに加え、米国で1980年代後半から始まり1990年代にピークを迎えたPolitical correctness (政治的に差別しないような表現)という意識の高まりがあります。黒人をアフリカ系米国人(African American)と呼ぶなど人種への配慮の他に、例えば議長はChairmanでなく Chairperson、Businessman をBusinessperson とするなど、性差別のない表現が積極的に用いられるようになりました。

こうした背景から米国では早くも1970年代の終わりにはスチュワーデスを、フライトアテンダントと呼ぶようになりました。

■私の考察

米国ではこのような流れがあったため、日本でもそれに習い、スチュワーデスは、フライトアテンダント(または、キャビンアテンダント)と呼ばれることが多くなりました。

それでは、ヨーロッパではどうなのでしょう。特にアングロサクソン(英米)とは対照的なラテン言語は、構造上、男性形・女性形などがあらかじめ区別され、取り入れられているため、米国のように、性的に差別的でない言葉を使おうといった意識が、初めからありません。

例えば、フランス語でスチュワーデス(hotesse de l'air)は、(Hを発音しないので)オテスと呼ばれます。(スチュワードはそのままstewardです。)文字通り、「空のホステス」です。フランスでホステスというと、日本のように水商売を指しません。むしろ、「お客様を迎え、感じよくもてなす女主人」という良い意味しかないのです。よく女性誌で、ヨーロッパの由緒ある貴族の家のマダムが素敵なドレスに身をまとい、テーブルを美しくセッティングして、自宅に友人・知人を招く準備をしている写真などが掲載されていますよね。あのイメージです。お客様が快く感じるような演出のできるマダムほど、尊敬されることはありません。なぜなら、それにはさまざまなセンスや技能が必要だからです。豊かな経験や知識、気配り、会話のセンスなど、客人をもてなすためには、極めて多くの要素が求められます。

こうしたことを踏まえ、私はあえて、自分のウェブサイトのタイトルを「スチュワーデスになる!」としています。もともと、女性にしか演出できないもの、女性でしかできないもの、というのは存在します。フランスの女主人(オテス)のように優雅でありながら、多くの能力を要求される、「おもてなしの達人」が、その良い例です。私はそうした意味を元来持っていた、「スチュワーデス」という言葉を、あえて使いたいと思います。

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